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CPAが相場の2倍でも気づかないのは、点検する役割が無いから

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CPAが相場の2倍でも気づかないのは、点検する役割が無いから

CPAは、急に跳ね上がるわけではありません。少しずつ上がり、報告のたびに理由が添えられ、そのまま数か月が過ぎます。原因が分からないからではありません。その数字が妥当かどうかを点検する役割が、社内の誰にも割り当てられていないからです。

この記事では、CPAが高い状態に気づく話を書きます。獲得単価が競合相場の2倍以上になったまま回り続けている施策は、実際にあります。何を見れば気づけるのかを、後半で書きます。

この記事でわかること

  • CPAが高くなる原因は出そろっている。直らないのは点検する役割が無いため
  • 比べる前に、許容値を成約単価から割り戻す。物差しが無ければ高いと言えない
  • 運用側は「そもそも高い」と言いにくい。だから発注側が別の物差しを持つ
目次
  1. CPAが高騰する原因は、もう分かっている
  2. 目標が決まっていないCPAは、高いかどうかを判定できない
  3. 気づけないのは、点検する役割が空いているから
  4. 相場より高いと言いにくい立場の人が、数字を持っている
  5. 相場の倍の獲得単価を見つけたときに、実際に見た数字
  6. CPAを下げる前に、点検する担当と頻度を決める
  7. CPAが高くても、すぐ動かないほうがよい場合
  8. まとめ:今日、1つだけ確かめてみてください

CPAが高騰する原因は、もう分かっている

CPAの高騰について検索すると、上位の記事はどれも原因を整理してくれています。5本のうち4本が原因を扱っていました。中身もほぼ同じで、次の4つに集約されます。

原因の種類何が起きているか
外部の要因競合の入札が強まった。季節で需要が動いた
設計の要因ターゲットやキーワードが広すぎる。狙いとずれている
着地の要因広告からの遷移先(LP)が弱い。訴求が合っていない
測り方の要因計測の設定が間違っている。同じCVを二重に数えている

4つのうちどれなのかは、次の順で確かめると早く切り分けられます。

  1. 同じ期間で、表示回数とクリック単価がどう動いたかを見ます。クリック単価だけが上がっていれば、外部の要因(競合の入札)の可能性が高いといえます
  2. クリック単価が変わっていないのにCPAが上がったなら、着地(LP・訴求)か設計(ターゲット)のほうです
  3. どちらも動いていないのにCPAだけ上がったなら、測り方を疑います。計測タグの重複や、CVの定義が変わっていないかを見ます

どれも正しい整理です。

問題は別のところにあります。高騰の原因が分かっているのに、CPAは高いまま続く。これはなぜなのか。

目標が決まっていないCPAは、高いかどうかを判定できない

「CPAが高い」と言うとき、何と比べていますか。

CPAが8,000円だったとします。これは高いのか、安いのか。比べる相手がなければ、答えは出ません。

比べ方は2通りです。

  • 他社の相場と比べる(同じ業種の平均はいくらか)
  • 自社の許容値と比べる(自社の粗利で、1件いくらまで払えるか)

ところが、業種別のCPA相場が公開されている例はほとんどありません。上位5本のうち、業種別の相場に触れていたのは1本だけでした。

理由は、CPAが条件の掛け算で決まるからです。

条件CPAへの効き方
媒体検索・SNS・ディスプレイで単価の桁が変わる
商材の単価単価が高いほど、許容できるCPAも上がる
成果地点資料請求と問い合わせでは、同じ広告でも数倍違う
地域・時期商圏が狭いほど競合が集中する。繁忙期は入札が上がる

この4つが違えば、同じ業種でも数倍ずれます。だから「業界平均」という数字は、あっても自社に当てはめにくい。

そうすると、残るのは自社の許容値のほうになります。

許容CPAは、成約した単価から割り戻す

私が関わったB2Bの案件では、この許容値が決まっていませんでした。

代理店からは「獲得単価が3割下がりました」という報告が届きます。数字そのものは正しい。ただ、下がった先が高いのか安いのかを言う基準がありませんでした。

許容値が決まっていないと、下がっても上がっても判定できません。成約単価から商談率・問い合わせ率で割り戻す手順は、CPAが下がったのに売上が増えない理由に書きました。この記事では、その許容値を誰が、どの場で見るかを扱います。

この物差しがあれば、「CPA8,000円」は許容値の8割と読めます。無ければ、高いとも安いとも言えません。

それでも相場を知りたいときは、聞く先が3つある

自社の許容値が先だと書きましたが、相場を知ること自体は無駄ではありません。取り方は3つあります。

  • 運用している代理店に直接聞く。同業種を何社も見ているので、肌感を持っています。聞かれれば答えてくれることが多いです
  • 媒体の管理画面にある推奨値を見る。入札の目安として、媒体側が提示している数字があります。ただし媒体の都合が入るので、参考値として扱います
  • 同じ商材で複数の代理店から見積もりを取る。想定CPAが提示されることがあります。数字そのものより、根拠を説明できるかどうかを見ます

どれも決定打にはなりません。相場は自社の許容値を補強する材料であって、判断の軸にはしない。この順序を逆にすると、他社の平均に自社を合わせにいくことになります。

POINT

  • 業種別のCPA相場はほとんど公開されていない
  • だから比べる相手は自社の許容値になる
  • 許容CPAは成約単価から各段階の比率で割り戻して出す
  • 相場は補強材料として、代理店・媒体・相見積もりの3つから取る
棒が1本だけでは高いかどうか分からず、許容CPAの線を引いて初めて上回っていると分かることを示した図

気づけないのは、点検する役割が空いているから

ここからが本題です。

許容CPAを決めれば、高いかどうかは分かります。では、それを誰が見ているのか。

多くの会社で、点検の役割は空白のままです。

運用する人は、自分の数字を「高い」と言い出しにくい

CPAの数字を毎日見ているのは、運用の担当者です。代理店に任せていれば、代理店の担当者です。

その人たちは、広告の改善提案はします。入札を調整しました、広告のクリエイティブを差し替えました、キーワードを整理しました。数字が動けば報告も来ます。

ただ、「そもそもこのCPAは相場より高い」とは言いにくい。自分が運用している数字だからです。不誠実だからではなく、立場上そうなるからです。

発注する側は、管理画面の数字をそのまま受け取る

一方、発注する側は広告運用の月次報告を受け取ります。CPAが下がった、CTRが改善した、CVRが上がった。

数字は全部そろっています。そろっているので、疑う理由が見つかりません。

比べる相手を持っていないと、報告された数字は妥当な水準として通ります。前月比で下がっていれば、なおさらです。

誰も嘘をついていないのに、高いまま続く

運用側は改善を続けています。発注側は報告を受け取っています。どちらも仕事をしているのに、CPAの高騰に誰も気づかない。 相場の2倍になっていても同じです。

担当者を替えても直りません。役割が空いているだけなので、次の人が入っても同じ場所が空いたままになります。

なぜこの役割は、放っておくと空くのか

点検は成果が見えにくい仕事だからです。

広告を運用すれば、数字が動きます。改善すれば報告できます。一方で点検は、「問題がなかった」という結果になることが多い。何も見つからなければ、何もしなかったように見えます。

だから、忙しくなると最初に省かれます。省いても、その月は何も起きません。起きないまま数か月が過ぎて、気づいたときには相場の倍になっています。

成果が見えにくい仕事ほど、担当と頻度を先に決めておく必要があります。 誰かが気づいたらやる形にすると、必ず消えます。

上位5本の見出しをすべて読みましたが、この「気づけない」という状態に触れた記事はありませんでした。原因の一覧と改善の方法は、むしろ競合のほうが厚く書いています。抜けているのは、原因を知っている人と、それを点検する人が別だという視点です。

POINT

  • 運用側は自分の数字を「高い」と言い出しにくい
  • 発注側は比べる相手を持っていない
  • 誰も嘘をついていないのに、CPAは高いまま続く

相場より高いと言いにくい立場の人が、数字を持っている

もう少し構造を掘ります。

この問題がやっかいなのは、比較材料を持っている人と、それを使いたい人が別だという点にあります。

何を持っているか何を持っていないか
運用側(代理店・担当者)他社の運用実績。相場の肌感発注側の粗利・成約単価
発注側(事業の責任者)粗利・成約単価・許容値他社の相場との比較材料

代理店は同じ業種の広告を何社も運用しているので、「この単価は高いほうだ」という感覚を持っています。とはいえ、その感覚を自分から差し出す動機は弱いままです。

発注側は自社の許容値を出せますが、他社と比べる材料がありません。

持っている材料が食い違うかぎり、運用側と発注側のどちらか一方に任せても、点検にはなりません。 だから発注側が、自分で持てる物差しを用意する必要があります。

発注側が持てる物差しは、管理画面の外にある

広告の管理画面が数えてくれるのは、申し込みが入ったところまでです。その先で受注になったかどうかは、営業が持っています。

この2つをつなぐと、管理画面の中では見えない差が出ます。同じCPAでも、成約につながっている経路と、そうでない経路が分かれます。

これは他社との比較ではありません。自社の中での比較です。相場を知らなくても、経路ごとの優劣は判定できます。

自社の中で比べられる軸は、少なくとも4つ取れます。

比べる軸何が分かるか
経路別(媒体・キャンペーン)どの入口から来た人が成約しているか
時期別(前年同月)季節の影響を除いて、実力が上がっているか
商材別同じ広告費でも、どの商材が回収できているか
成果地点別資料請求と問い合わせで、成約率がどれだけ違うか

★4つとも、他社のデータを一切使いません。 相場が手に入らなくても、今日から始められます。

とくに2つ目(前年同月)は見落としがちです。前月比だけを見ていると、季節の山谷を実力の変化と読み違えます。

データの持ち方についてはデータ活用の考え方にも書きました。

相場の倍の獲得単価を見つけたときに、実際に見た数字

実際の話を書きます。

ある案件で、獲得単価が競合の相場の2倍以上になっている施策を見つけました。管理画面の数字だけを見ていたときには、相場の2倍までずれているとは分かりませんでした。

見つけたきっかけは、広告の数字ではなかった

きっかけは営業側の情報でした。

申し込みは取れていました。件数も目標に近い。それなのに、受注が伸びていない。この違和感から、両方を並べました。

突き合わせに使ったもの。 大がかりなことはしていません。用意したのは3つだけです。

用意するものどこにあるか
広告の管理画面から出した申し込みの一覧広告の担当者・代理店
営業が持っている成約の一覧営業部門
2つをつなぐ列(会社名・メールアドレス・申し込み日)どちらにもある

このつなぐ列がないと、突き合わせができません。今の運用で持っていなければ、つなぐ列を足すのが最初の作業になります。計測ツールを検討するのは、その後で構いません。

並べてみると、CPAの意味が変わった

並べたところ、経路によって成約率が大きく違いました。

件数が取れている経路の成約率が低く、件数の少ない経路のほうが成約につながっていました。申し込み1件あたりのCPAは似ていても、成約1件あたりで見ると数倍の差が出ます。

このとき初めて、相場の2倍という状態が見えました。管理画面の中のCPAではなく、成約まで通したCPAで見たからです。

やったことは、社内にすでにあるデータを人が突き合わせただけです。新しいツールは入れていません。

見つけた後は、報告の形を変えた

数字が出た時点では、まだ「高い」という事実があるだけです。そのまま持っていっても、話は進みませんでした。

そこで、報告の形を変えました。

変える前変えた後
「この施策のCPAが高い」「成約1件あたりで見ると、A経路はB経路の◯倍かかっている」
「改善してほしい」「B経路に寄せると、同じ予算で成約が◯件増える計算になる」

同じ数字でも、成約を単位にすると事業側の言葉になります。 広告の指標のままだと、広告の担当者の話にしかなりません。

止めるかどうかまで踏み込んだ経緯は、広告費を止める判断基準のほうに書きました。

POINT

  • 相場の2倍という状態は、広告の管理画面だけでは見えなかった
  • 営業が持つ成約情報と突き合わせて初めて分かった
  • 必要だったのは3つの資料と、それをつなぐ列だけ

CPAを下げる前に、点検する担当と頻度を決める

下げる手の前に、決めることがあります。点検する人、頻度、見る数字です。入札の調整、キーワードの整理、広告クリエイティブの差し替え、LPの改善。どれも有効です。

その前に、決めることがあります。

1. 点検する人を1人決める

運用する人とは別に置きます。同じ人が運用と点検を兼ねると、さきほどの「言い出しにくい」関係がそのまま残ります。

必要なのは広告の知識ではありません。粗利と成約単価を知っていて、他部門と話ができる人です。判断の材料は運用側が出せます。

2. 点検する頻度を決める

毎日見る必要はありません。CPAは日次では大きく振れるので、短い期間で判断すると誤ります。

月に1回、許容値と実績を並べる。それだけで、ずれが数か月続くことは防げます。

3. 点検で見る数字を決めておく

見る数字を決めずに会議を開くと、そのとき目についた数字の話で終わります。最低限、次の3つを並べます。

  • 許容CPAと、実際のCPA
  • 申し込み件数と、そのうち成約になった件数
  • 経路別の成約率

3つ目が出せない場合、それはまだ突き合わせができていないという意味です。申し込みと成約をつなぐところが、最初の課題になります。

点検の場では、次の3つを聞く

数字を並べたあと、次の3つを聞くと、報告の中身が変わります。

  • 「この数字は、何と比べて良い(悪い)のですか」 — 前月比なのか、許容値なのか、他社なのかをはっきりさせます
  • 「申し込みのうち、何件が成約になりましたか」 — 広告側が答えられなければ、営業側とつながっていません
  • 「この単価は、他社と比べて高いほうですか」 — 代理店は他社の運用も見ています。聞かれれば答えられることがあります

3つ目は、聞かなければ出てきません。言い出しにくいだけで、知らないわけではないからです。

広告そのものの運用設計は運用型広告の考え方、数字の見方の全体像は効果測定の考え方に整理しています。

いつから始めるか

「まず計測を整えてから」と考えて、着手が遅れることがあります。

順序は逆で構いません。いま出せる数字だけで、1回やってみる。許容CPAが出せなくても、経路別の成約率が出せなくても、その場で「何が出せないか」がはっきりします。出せないものが、次に埋める場所です。

完璧な状態を待つと、たいてい始まりません。ずれは待っている間も広がります。

POINT

  • 点検する人は運用する人と別に置く
  • 頻度は月1回で足りる
  • 見る数字は許容CPA・成約件数・経路別の成約率の3つ
  • 計測が整うのを待たず、出せる数字だけで1回やってみる

CPAが高くても、すぐ動かないほうがよい場合

最後に、この方法が向かない場面を書きます。

データが少ない時期のCPAで判断しない

配信を始めた直後は、CPAが大きく振れます。高騰しているように見えても、母数が足りていないだけのことがあります。クリックが数十件、申し込みが数件という段階の数字は、ほとんど参考になりません。

点検の頻度を月1回にしているのは、この振れをならすためでもあります。

業種別の相場を絶対視しない

「業界平均のCPAは◯◯円」という数字を見かけることがあります。その多くは、出所と条件を確かめられません。

媒体・商材・単価・地域が違えば、CPAは簡単に数倍変わります。他社の平均に自社を合わせにいく必要はありません。 比べるべきは自社の許容値です。

高いと分かっても、止めるかどうかは別に判断する

認知が目的の広告なら、獲得単価だけで止めません。点検で分かるのは「高いかどうか」までです。止めるかどうかは、別の合意になります。

止めるかどうかの決め方は、広告費を止める判断基準に分けて書きました。この記事は「気づく」ところまでです。

点検の場が、報告会になっていないか

点検を始めても、しばらくすると形だけになることがあります。

見分け方は簡単です。その場で「では、どうするか」が決まっているかどうか。数字を読み上げて終わっているなら、それは点検ではなく報告会です。

点検の目的は、許容値とのずれを見つけて、次の一手を決めることにあります。ずれが無ければ5分で終わって構いません。毎回1時間かけているなら、たぶん別のことをしています。

点検役を置いても、権限がなければ動かない

もう一つ、置き方に注意があります。

点検役を決めても、その人に何の権限もなければ、見つけたずれは報告で終わってしまいます。「CPAが許容値を超えています」と伝えて、そこで止まる。次の月も、同じ報告が出ます。

必要なのは、見つけたときに次の一手を決められる立場でした。予算の配分を変えられるか、施策を止める提案を通せるか。権限まで含めて置いてください。

若手に任せる場合は、決裁できる人とセットにするのが現実的でしょう。数字を見るのは若手、決めるのは責任者、という分け方であれば回ります。

外から点検役を借りるという選択もある

社内に置きにくい場合、外部の人間に点検の役割を持たせる方法もあります。費用の目安はCMO代行の費用相場と内訳にまとめました。

まとめ:今日、1つだけ確かめてみてください

CPAが高い原因が分からないのではなく、それを点検する人が決まっていない。この記事で書きたかったのはそこです。

いま出している広告について、次の5つを確かめてみてください。手元の資料を開けば、10分ほどで分かります。

  • 許容CPAが決まっているか。決まっていなければ、報告の数字が良いのか悪いのかを判断できません
  • その数字は成約単価から割り戻したものか。他社の相場を借りていると、自社の粗利と合いません
  • CPAの妥当性を点検する人は誰か。運用する人と同じなら、点検役は空いたままです
  • 点検の頻度は決まっているか。月1回で足ります
  • 申し込みの先(成約)まで追えているか。追えていなければ、経路の優劣が判定できません

3つ目に名前が入らなかったら、そこが最初に埋める場所です。CPAを下げる打ち手を増やすより先に、誰が点検するかを決めてください。

決めるのは、大げさな話ではありません。次の定例で「CPAが妥当かどうかを見る役は誰にしますか」と一度聞けば、その場で決まることも多い。もし決まらなければ、それ自体が今いちばんの課題です。

点検役を置いた月から、報告の中身は変わります。数字を読み上げるだけの場ではなくなり、「何と比べて、どうするか」を話す場になります。CPAが下がり始めるのは、たいていその後です。

数字の設計から一緒に見直したい場合は、効果測定の考え方もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた人

たけまるマーケティングディレクター

事業会社で17年、マーケティングの現場と決裁の場にいました。広告・コンテンツ・データのどれか一つではなく、売り方全体を決める側から見た話を書きます。